シアターピエロ

How are you getting along these days, baby?

あたしの無惨な穴へ


理不尽な事柄について のっぴきならない事情があると踏まえたうえで

初めから無い、と、途中から無くなる
どちらのほうが辛いでしょうか、と考えたらそれはやはり、途中から、の方なんだろうなあと
在った頃のことを思い出しては苦い気持ちになる
きっかけは明白で、当たり前だった幸せが、突然、無くなってしまう
幸せだった分だけぽっかり大きな穴が開き、中には変えようのない現実だけが転がっている
頭をふると脳の中でからからと音を立てて耳障りなことこの上ない
その穴は、新しい幸せか、憎しみでしか埋めることができない
どちらも持ち合わせていない、あるいは、まだまだ足りない、という人が、
いつまでも嘆き悲しみ途方に暮れている
不幸を感じるのは、脳がキリキリするのは、穴のせいだけじゃない
だけど、ふとした瞬間に意識してしまい、「どうして」がわき上がってくる

初めから無い、の場合は、穴なんて開かないはず
無いものは無いんだから、「在る状態」がわからないんだから、不憫も何もないじゃないか
意味がわからん、と、飄々としていられるはず
しかしそれは間違いだった、結局のところ、ただの強がりになってしまった
わからないと知らないはイコールではなかったし
近しい存在は、あくまでも近しい存在 代わりにはならない むしろ、余計に意識することになる
比べるなら蟹とカニカマくらい違う
いや、チーカマかもしれない どっちもおいしいけど(笑)
「それ蟹?」と訊かれたら「蟹じゃないっす」としか言えない

蟹が嫌いな人もいるし、産地だとか種類だとかいろいろで、一概に「蟹はすばらしいものだ」とはならないけど
「蟹ってちょーうまいよ!」なんて言う人がいれば、そういうものなのか、と思ってしまうのが人の性
四六時中頭を悩ませるほどの重大な事柄ではないけど
なんか疲れたなあってなったときに、思考が巡り巡って、どうでもいいことまで掘り出され、
あ、穴開いてるのか、と、気付く
きっかけは無く、少しずつ広がっていった穴
飄々としていたぶんだけ「こんなはずでは…」とがっくりする、穴
とりあえず憎しみ的なものを放りこんでおくけど自分が絶対的に正しいなんて誰が言えようか
くだらない

あっリアル蟹(?)は食べたことあるよ、念のため 蟹剥いてると手がかゆくなるよね

そんな2種類の穴に近しい?「あたしの無惨な穴」
これすごくいいなあ、と思う記述を以前読んだんだけど、見つからなんだ
階段だか、梯子だか、そんな言葉があったような気がするんだけど
………また記憶を捏造しているんだろうか(私の脳やばい 妄想癖か 元からか)
髪の重さだけ思考が暗くなる妖怪
ちょっくら梳いてくるか!

天野月子/Howling